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28 April

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02 January

Film: Before Midnight



映画『ビフォア・ミッドナイト』の感想

あらすじ》*《予告編

 学生時代、TSUTAYAでアルバイトをしていたのだが、お客さんが返却したDVDを棚に戻しに行くとき、僕はラブ・ストーリーのコーナーをどこか軽視していたように思う。いや、「思う」などという無責任な言い方は往生際が悪いか。「こんなものを観て感動している奴は、もっと実際の恋愛で有利になることを頑張った方がいい」くらいのことを考えていた。そしてそれは、映画という芸術そのものを軽視していた、ということなのかもしれない。

 今になって思えば、同じような淡いカラーリングのパッケに、優しいフォントで似たような邦題がズラリと並ぶあの棚の中に、『恋人までの距離』という邦題(副題)を与えられた『ビフォア・サンライズ』も紛れていたのだと思うと、自分の浅はかさが恥ずかしくなる。あの頃の自分は、もっと大きなテーマの映画を好んでいた気がする(『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『ノーカントリー』、『ダークナイト』、『イントゥ・ザ・ワイルド』、、、)。それが高尚なことだと思っていたのだ。そういう愚かしい時代が誰にでもある。

 この歳になってから観た『ビフォア・サンライズ(恋人までの距離)』は二つの意味で衝撃的だった。一つは、運命論な悲劇としての愛ではなく、運命的ではあるがどこか軽薄な恋(いまの大学生の言葉を借りるのならば、ワンチャン)を描くこと、まさに「日が昇るころには別れなければならない、旅先で出会ったばかりの男女」を描くだけのことが、ここまで美しく、(完全に使い古された言い方を選ぶのならば)こんなにもロマンティックな映画になるのか、ということを教えてくれたこと。二つめは、周知のように、そのロマンティックな映画がほぼ「二人の会話だけで」成り立っていた、ということである。

 『ビフォア・ミッドナイト』は三部作の最終章にして最高傑作だ。『ビフォア・サンライズ』を『ビフォア・サンライズ』たらしめたあの小気味よい会話劇を、同じ緻密さと知性と熱量で、ディスコミュニケーションへとそのまま転用するのである。その構図は以下のとおり。「あなたは『女は感情的にしかものを考えられない』と思っているんでしょうけど、どちらが論理的に物事を考えているかを教えてあげるわ」「お前は『<女は感情的にしかものを考えられない>と僕が思っているのだということ』を見抜いているつもりなんだろうけど、そうやって見抜いているつもりになっているお前のことを俺は見抜いて喋ってるんだぜ」(以下、どちらかがマジ切れするまで繰り返し。)

 つまり、不毛だ。すべての痴話喧嘩がそうであるように。さらに切ないのは、「かつての自分たちのような」若いカップルが劇中に登場することだ。彼らの世代は、旅先でたまたま出会ったとしても、最低でも名前だけでも聞いておけば、あとでフェイスブックを検索すればいつでもコンタクトが取れるし、スカイプで飽きるほど話すことができる。もちろん、スカイプ越しに「クレイジーなこと」をすることも。『ビフォア・サンライズ(恋人までの距離)』のような出会いが、もはや一定の時代背景だからこそ成り立った神話と化してしまったことを、二人は知る。若い女の子は「まあ、ロマンティックね」と言ってくれたが、もちろん、それはお世辞である。

 「映画になるほどロマンティックな恋」に落ちた二人は、実は、自分たちの恋が特別なものだと思い込んで、むしろ自分たちは世界に二つとない完全な恋に落ちたと自分を信じさせることで、その恋に恋していただけだったのではないか?というシニカルな視点から、カメラは現在の二人を黙って見つめ続ける。僕たちはうまく愛について語ることはできないし、愛を言葉で伝えることもできないのだろう。そう、誰かを実際に愛すること以上には。計算された会話劇でファンを18年間魅了し続けたこの映画が、本作の最後、言語的な領域をたしかに越えて行くような気がして、ボタボタと涙をこぼしながら唸ってしまった。完璧ではないかも知れないが、真実の映画だと思う。それはつまり、完璧な愛など存在しない、ということの示唆に他ならない。


◎劇中では使われないけどエンドロールで勝手に流したくなる曲(The Velvet Underground - "I'll Be Your Mirror")
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01 January

Film: Frances Ha

 

映画『フランシス・ハ』の感想

あらすじ》*《予告編

 象徴的なシーンがある。ニューヨークでの惨めな現実にうんざりしたフランシスは、知人のつてでパリへと逃亡する(それも、相手の社交辞令を真に受けた空気の読めなさっぷりで周囲をドン引きさせながら部屋を借りたのだが)。時差ボケのせいもあるのだろうが、フランシスは眠る時間を間違え、朝、起きることができない。ようやく目覚めたのは16時過ぎで、一日が終わりかけた頃だ。しかし、彼女はそれを気にするようでもない。それもそうだろう。彼女を待つ人はどこにもいないのだから。彼女はいつだって「誰か」を、そして「何か」を待っているのだけれど。一事が万事、フランシスの人生はそのように過ぎて行く。これまでも、きっと、これからも。

 おまけに、現地にいる筈の旧友とは一向に連絡が付かず、かわりにかかってきた電話は、ニューヨークで喧嘩別れをしてしまった唯一の親友であるソフィーからの「待ちに待った」連絡である。「恋人の仕事の都合で、日本へ引っ越すことになったの。明日、お別れのホーム・パーティーを開くんだけど、来てくれない?」。パリに来てしまったフランシスは当然、物理的に行くことができない。一事が万事、この調子である。失望のうちに帰路につき、ニューヨークに着いた頃に、連絡のつかなかったパリの旧友から留守電が入る。「連絡遅くなってごめんね。今夜、晩御飯でもどう? いい人も紹介できると思うの」。

 フランシスの生きる世界は、(僕たちの生きる世界がそうであるように)女子であれば結局のところは弁護士のカレと結婚することを「勝ち」とするような世界である。空気を読み合い、「女子の自己実現」という建て前が建て前であることを仄めかし合って生きて行くような、そんな世界だ。フランシスは、(自覚的かそうでないかに関わらず)一時的な「負け」としてのアートに生きている。ニューヨークのブルックリンという、スノッブやファッションとしての「インディー」が蔓延る街で、彼女はモダン・アートとしてのダンスに生きている。「今に見とけよ」と意気込む彼女の中では、いつか彼女は逆転することになっている。もちろん、(僕たちの大半がそうであるように)彼女は何者にもなれない。そのくせ、恰好だけのインディー・セレブ男子と同棲したくらいで満足してしまう程度の自意識であることに、彼女は気付けない。

 結局のところ、自分の人生をどのように受け入れるか、である。それを大人になる儀礼だとするなら、その意味でフランシスは大人になれないでいる。人前で自分の理想をベタに披露することなど、普通の大人であれば差し控えるところを、フランシスはやってしまう。酒に酔い、自分は「真実の恋」に落ちるのをずっとずっと待っているのだと彼女は語る。それが人生だと。あるいは、アートに関する知識を小出しにすることで、「私はひと味違う人間なんだ」という矮小な自己顕示をやってしまう。彼女は27歳である。焦れば焦るほど、彼女は何者にもなれない。この映画が恐ろしいのは(そして、それ故に私たちを引き込むのは)、フランシスが「一時的な負け」として選んだアートの世界の中でも再度「負けてしまう」ことだ。

 映画は、フランシスに救いの手を差し伸べながら終わる。そして、この映画のタイトルの意味を最後に知るときに私たちが浮かべるであろう微笑は、彼女の慎ましい、不恰好な人生に捧げる祝福そのものだ。


◎劇中で流れる印象的な一曲(David Bowie - "Modern Love") 



◎劇中では使われないけどエンドロールで勝手に流したくなる曲(Yo La Tengo - "Is That Enough")
15 December

Discover>>>: Favorite 20 Albums of 2014 (20-11)

年間ベスト・アルバムの記事を更新する直前、「30枚の予定でしたが、やっぱり10枚に圧縮させようかと思います」とツイートしたとおり、先日発表した《Favorite 10 Albums of 2014》は、当初発表予定だったベスト30の中から、「自分が特に2014年っぽいと思える作品」を点描的に抽出したものでした。つまり、厳密な意味でのトップ10ではありませんでした。今回は、せっかく選んだこともあり、こぼれてしまった残りの20枚の中から「それでもやはり、聴かれるべき作品」を10枚選定しました。逆を言えば、「なぜ最終の10枚から漏れてしまったのか」を考えることになったと思います。では、どうぞ。



20
Ian William Craig 
A Turn of Breath
[Recital]





クオリティ的には申し分なし。マスタリングも素晴らしい。しかしそれゆえに、2014年という短いスパンで評価すべき作品ではないかと。レコードでよく聴きました。(BUY/LISTEN


19
Rome Fortune
Beautiful Pimp II 
[self-released]





大豊作だったアトランタ勢の中での競合で敗れたが、必聴のミックステープであることには変わりない。詳しくはこちらで。(DOWNLOAD/LISTEN


18
Shintaro Sakamoto
Let's Dance Raw
[Zelone]





オウガとの競合で次点とした。コンセプト的にはVaporwave、精神的にはパンクという、2014年にはドンピシャの作品だったが、やはり、言葉が少し強すぎる気がしました。(BUY/LISTEN


17
Tink
Winter's Diary 2
[self-released]

 



再生回数で言えばもっと上。しかし、FKA twigsをトップ10から外す決断をした以上、それを差し置いて評価することはできなかった。詳しくはこちらで。(DOWNLOAD/LISTEN


16
Susan Balmar 
SIGNUM
[Beer On The Rug]





トップ10への入選はD/P/Iに譲った。関連プロジェクト含めて、どれがもっとも音楽として優れているのか、発狂寸前になりながら考えたが、やはりD/P/I以外には考えられなかった。さらなる大躍進が期待されるエクスペリメンタルの大いなる可能性。(BUY/LISTEN


15
FKA twigs 
LP1
[Young Turks]





詳しくはこちらで書いたレビューに譲るが、簡単に言えば、1=『EP2』とどうしても比べてしまった。2=LPの尺でやるには、もう少しコントラストの面で工夫が必要な気がした、ということ。曲を厳選した『EP3』であればもっと上だったかも。(BUY/LISTEN


14
TCF 
415C47197F78E811FEEB7862288306EC4137FD4EC3DED8B
[Liberation Technologies]





ArcaやLoticとの競合で次点としたが、ポスト『&&&&&』における壮大な一歩であることに違いはない。2015年も要注目。詳しくはこちらで。(BUY/LISTEN


13
Death Grips 
niggas on the moon
[self-released]





クオリティ的にはトップ10級。が、ラスト・アルバム(の片割れ)であることを考えてしまうと切なくなり・・・。(DOWNLOAD/LISTEN


12
Swans 
To Be Kind
[Mute / Young God]





天野龍太郎のレビューにやられた。プログレ的と言うか、今年は一曲が長いロックを聴いていた気がする。(BUY/LISTEN


11
Giant Claw 
DARK WEB
[Orange Milk / Noumenal Loom]





あらゆる音楽を断片化し、アーカイブ化したデータベースの上で、悪魔がスロット・ゲームで遊んでいるかのよう。サイコロが転がるたびにジャンルを自在に横断する。自分よりもガッツリ褒める人がいるだろう、と思って最後に外してしまった。マスト。(BUY/LISTEN



14 December

Discover>>>: Favorite 20 Albums of 2014 (10-1)

昨年はこの場で「ゼロ年代がちゃんと終わった」などとコメントしたのを覚えてますが、その象徴たる『ピッチフォーク』の点数などいよいよ誰も気にしなくなった2014年、面白かったのはベルリン、シカゴ、アトランタあたりのアンダーグラウンドだった気がします。通いたいショップは京都にならありましたが、あまりに遠いうえに通販でも競争に負けることが多く、欲しい音楽の多くはBoomkatやBandcampでダウンロードしてた気がします。やけにディスられることも多かったように思いますが、僕はマイナーな人間になったのでしょうか? いや、ポップの更新ができていないのはあなたの方です。聴くべき音楽、つまり「本当の意味でのポップ」はいま、ここにあります。


10
Music For Your Plants
PAN EP
[DIS Magazine]





自ら名乗るように、これは「あなた(=人間)のための音楽ではない」と。ディストロイドとジューク/フットワークを飲み込んだ、アンドロイドのためのレイブ・ミュージック。(DOWNLOAD/LISTEN


9
Lil Herb 
Welcome To Fazoland
[NLMB]




シカゴのドリル・シーンが生んだ最高のタレント。「リアルな」ヒップホップが聴きたければ、このミックステープは外せない。チャンス・ザ・ラッパーの弟とも友だちだとか。(DOWNLOAD/LISTEN


8
Gem Jones 
Admiral Frenchkiss
[Goaty Tapes]





ピクシーズは好きか? ヨ・ラ・テンゴを聴いて泣いたことはあるか? この歌声には抗えない。2014年のベスト・オブ・インディー・ロック。(BUY/LISTEN


7
Lotic 
Damsel In Distress
[Janus]




アルカの『&&&&&』に影響を受けたようなディストロイド・サウンドの多くはベルリンで生まれた。この音源のダウンロードを逃した人は、2014年の一部を確実に見落としている。詳しくはこちらで。(DOWNLOAD/LISTEN


6
thestand4rd
thestand4rd
[self-released]





2015年に確実に来る、ミネアポリスのヒップホップ・コレクティブ。ジェイムス・ブレイクとポスト・トラップの向こう側へ。詳しくはこちらで。(DOWNLOAD/LISTEN


5
18+ 
Trust
[Houndstooth]





ポップにしてヒップ。正確には2014年の作品ではない、「ベスト・オブ・ミックステープ」な内容だが、マスタリング・エンジニアを見ればどういう文脈で聴かれるべきなのか、分かる人には分かるでしょう。(BUY/LISTEN


4
OGRE YOU ASSHOLE
PAPERCRAFT
[P-VINE]




レーベルの担当者から見本の白盤を預かり、プレイヤーで再生した瞬間にへなへなと座り込んでしまった。こんな作品が出てしまっては、この国でロックと呼ばれている音楽の9割はもはや聴く必要がない。ロックが終わったあとのロック。それでも続いているロック。それはあまりにも・・・。詳しくはこちらで。(BUY/LISTEN


3
Arca 
Xen
[Mute]




レコードでよく聴いた。音の鳴りがとにかく素晴らしい。瞬く間にアルカ論壇のようなものが形成され、自称「インディー(?)」な人たちにやたらと空中でディスられた気がするけれども、相手をする時間すら惜しく。まあ、詳しくはこちらで。『エレ・キング』の最新号では、単独取材でインタビューしてます。(BUY/LISTEN


2
D/P/I 
MN.ROY
[Leaving]




実質的には同率一位、2014年の最高峰。「D/P/Iの音楽は仕上がったらすぐにリリースされるされるべきだと思う。プレスされるのを待つようなモノじゃないんだ」と、『エレ・キング』の最新号で自ら語っています。(BUY/LISTEN


1
ETHEREAL
Cactus Jack
[Awful]




総勢11人、アトランタでルーム・シェアをするヒップホップ・コレクティブから生まれた2014年のベスト。オンラインの地下室とも共振する、2015年に間違いなく爆発するアンダーグラウンド・ヒップホップの未来。詳しくはこちらで。(BUY/LISTEN
13 December

Discover>>>: Favorite 10 Songs of 2014

今年のお気に入りを10曲リストアップしてみました。メタ的な批評性はなくして、iTunesの再生回数を参考にしました。新鮮さ確保のため、アルバム部門である《Favorite 10 Albums of 2014》収録曲は外してあります。

10
Nmesh - “KΞΞP/////THIS/////”


良識あるリスナー諸氏よ、どうかこの曲は無視してくれ。これはあの蒸気への大いなる未練だ。



9
シャムキャッツ - “MODELS”



曲単位では一番聴いた国内ロック。マジック・バスを降りた、あいつやあの子のための・・・。



8
THE BL∆CK HE∆RTS CLUB - “Girl Tell Me Something”



2014年のデ・ラ・ソウル。



7
Tink - “Treat Me Like Somebody”



2010年代の暫定メロウ・クイーン。



6
KOHH - “貧乏なんて気にしない”



実家がずっと賃貸アパートだったブルースみたいなものは俺にもある。



5
BOK BOK featuring KELELA - “Melba's Call”



海外メディアはこの曲を忘れたのか?



4
Holly Herndon - “Home”



とにかくアルバムが待たれます。



3
Tobias Jesso Jr. - “True Love”



アルバムが春先に出るみたいですね。



2
Chance the Rapper & The Social Experiment - “Wonderful Everyday: Arthur”



ミクステ、一応あれで完成なのかな。



1
iLoveMakonnen feat. Pyramid Quince, Rich Po Slim & Archibald Slim - “Vodka On The Weekend”



年間ベスト・トラック総なめ状態のこの男はしかし、アトランタのアンダーグラウンドでこそ輝いていた。