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24 November

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25 January

List: 2010-2014 BEST ALBUMs In 日本語ラップ (2Dcolvics)

#01,02


 ヒップホップにおいて「ストリートの」とか「ストリート的な」といった言葉は、「リアリズム」とほぼ同じ意味で使われるが、しかし、それが本当のリアリズムたり得たことなど果たしてどれだけあったのだろう。多くの場合、そこにほんの少しでも脚色なり誇張が含まれてはいなかったか。だとすればそれは、あくまでも「リアリズム風」の表現だったに過ぎない。一方、ERAの極めて分裂気味な、ビート文学を研究したというよりはリリックを殴り書きしていたらたまたまビートのそれになったようなサイケデリックな散文詩は、自分を自分以上のものに見せようとしないという意味で、どこまでもリアリズムだったと言えるだろう。にも関わらず、同時に、彼のリリックには「オレ」すらも不在である。ERAは、「オレ」を最高に、決定的にハイにしてくれるものが「オレ」の周りを思わせぶりに通り過ぎて行くのを、ただニヒルに眺めているばかりだ。J・ケルアックの言うように、彼が路上に見出したのは「リアル」ではなく、いくつかの「啓示」に過ぎない。

   *   *   *

#03

 この企画に二度参加できるのなら、僕はもう一方の参加権を存分に行使して、SIMI LAB関連作で徹底的に固めたリストを組んだだろう。USのミックステープを追いかけていると、やたらと多数なメンバーを抱えるヒップホップ・コレクティブが同時多発的に登場している印象を受けるわけだが、ここ日本のラップ・シーンにおいても、どこの国に出しても恥じない最高にクールな多人数グループがデビューしていたのだから。筆者が最後の最後まで悩み、今回のリストがこのようになったのは、やはり、SIMI LABのすべてがQNだったとは当然言えないにしても、一定の割合において決定的な存在だったと考えざるを得なかったからだ。ERAとは正反対に、その清々しいまでの大言壮語は非常にヒップホップ的だった。

   *   *   *

#04

 冒頭の話を早くも繰り返す。「日常」だの「等身大」だのと言われがちな昨今のポップ・ミュージックの歌詞が、本当の意味で日常的で、等身大だったことがかつてどれほどあったのだろう。それらはあくまで「日常風」であり、「等身大風」だったに過ぎない。一方でこの、ECDのリリックときたらどうだろう。筆者はこのアルバムにぎっしりと書き込まれた言葉を読んで、あるいは聞いて、一人の男の姿を、その表情を、その日常を、そして彼の汗の臭いまでも想像できる気がするのだ。

   *   *   *

#05

 ヒップホップとしてのみならず、ヴェイパーウェイヴ以降のモダンアートとして見たときに、もっとも批評的な言説に向くのはこのアルバムだろう。ポップアートの名高い古典をリミックスしたようなジャケット・アートに始まり、「音楽に二度とお金を払うな」と名付けたアルバムがお金を出さないと手に入らないのだから、「中の人」が筋書きしたコンセプトの強度はそれだけでもうかがい知れるというものだ。もちろん、中身も一級品で、リリックが単に犯罪的であるということよりも、それをリスナーにも欲望させることの方が重要だ。例えば、ECDが参加した本作屈指の一曲を聴いて、心の中で「いいぞ、もっとやれ、もっとやるんだ」と思わないような退屈な人間は、ポップ・ミュージックという表現とは最初から縁のない人間である。

   *   *   *

 以上、ヒップホップ・ブログ《2Dcolvics》様にて公開したリスト「2010-2014 BEST ALBUMs In 日本語ラップ」の中から、特によく聴いた作品の寸評でした。他の寄稿者の発表したリストは以下のリンクに飛んでみてください。
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15 December

Discover>>>: Favorite 20 Albums of 2014 (20-11)

年間ベスト・アルバムの記事を更新する直前、「30枚の予定でしたが、やっぱり10枚に圧縮させようかと思います」とツイートしたとおり、先日発表した《Favorite 10 Albums of 2014》は、当初発表予定だったベスト30の中から、「自分が特に2014年っぽいと思える作品」を点描的に抽出したものでした。つまり、厳密な意味でのトップ10ではありませんでした。今回は、せっかく選んだこともあり、こぼれてしまった残りの20枚の中から「それでもやはり、聴かれるべき作品」を10枚選定しました。逆を言えば、「なぜ最終の10枚から漏れてしまったのか」を考えることになったと思います。では、どうぞ。



20
Ian William Craig 
A Turn of Breath
[Recital]





クオリティ的には申し分なし。マスタリングも素晴らしい。しかしそれゆえに、2014年という短いスパンで評価すべき作品ではないかと。レコードでよく聴きました。(BUY/LISTEN


19
Rome Fortune
Beautiful Pimp II 
[self-released]





大豊作だったアトランタ勢の中での競合で敗れたが、必聴のミックステープであることには変わりない。詳しくはこちらで。(DOWNLOAD/LISTEN


18
Shintaro Sakamoto
Let's Dance Raw
[Zelone]





オウガとの競合で次点とした。コンセプト的にはVaporwave、精神的にはパンクという、2014年にはドンピシャの作品だったが、やはり、言葉が少し強すぎる気がしました。(BUY/LISTEN


17
Tink
Winter's Diary 2
[self-released]

 



再生回数で言えばもっと上。しかし、FKA twigsをトップ10から外す決断をした以上、それを差し置いて評価することはできなかった。詳しくはこちらで。(DOWNLOAD/LISTEN


16
Susan Balmar 
SIGNUM
[Beer On The Rug]





トップ10への入選はD/P/Iに譲った。関連プロジェクト含めて、どれがもっとも音楽として優れているのか、発狂寸前になりながら考えたが、やはりD/P/I以外には考えられなかった。さらなる大躍進が期待されるエクスペリメンタルの大いなる可能性。(BUY/LISTEN


15
FKA twigs 
LP1
[Young Turks]





詳しくはこちらで書いたレビューに譲るが、簡単に言えば、1=『EP2』とどうしても比べてしまった。2=LPの尺でやるには、もう少しコントラストの面で工夫が必要な気がした、ということ。曲を厳選した『EP3』であればもっと上だったかも。(BUY/LISTEN


14
TCF 
415C47197F78E811FEEB7862288306EC4137FD4EC3DED8B
[Liberation Technologies]





ArcaやLoticとの競合で次点としたが、ポスト『&&&&&』における壮大な一歩であることに違いはない。2015年も要注目。詳しくはこちらで。(BUY/LISTEN


13
Death Grips 
niggas on the moon
[self-released]





クオリティ的にはトップ10級。が、ラスト・アルバム(の片割れ)であることを考えてしまうと切なくなり・・・。(DOWNLOAD/LISTEN


12
Swans 
To Be Kind
[Mute / Young God]





天野龍太郎のレビューにやられた。プログレ的と言うか、今年は一曲が長いロックを聴いていた気がする。(BUY/LISTEN


11
Giant Claw 
DARK WEB
[Orange Milk / Noumenal Loom]





あらゆる音楽を断片化し、アーカイブ化したデータベースの上で、悪魔がスロット・ゲームで遊んでいるかのよう。サイコロが転がるたびにジャンルを自在に横断する。自分よりもガッツリ褒める人がいるだろう、と思って最後に外してしまった。マスト。(BUY/LISTEN



14 December

Discover>>>: Favorite 20 Albums of 2014 (10-1)

昨年はこの場で「ゼロ年代がちゃんと終わった」などとコメントしたのを覚えてますが、その象徴たる『ピッチフォーク』の点数などいよいよ誰も気にしなくなった2014年、面白かったのはベルリン、シカゴ、アトランタあたりのアンダーグラウンドだった気がします。通いたいショップは京都にならありましたが、あまりに遠いうえに通販でも競争に負けることが多く、欲しい音楽の多くはBoomkatやBandcampでダウンロードしてた気がします。やけにディスられることも多かったように思いますが、僕はマイナーな人間になったのでしょうか? いや、ポップの更新ができていないのはあなたの方です。聴くべき音楽、つまり「本当の意味でのポップ」はいま、ここにあります。


10
Music For Your Plants
PAN EP
[DIS Magazine]





自ら名乗るように、これは「あなた(=人間)のための音楽ではない」と。ディストロイドとジューク/フットワークを飲み込んだ、アンドロイドのためのレイブ・ミュージック。(DOWNLOAD/LISTEN


9
Lil Herb 
Welcome To Fazoland
[NLMB]




シカゴのドリル・シーンが生んだ最高のタレント。「リアルな」ヒップホップが聴きたければ、このミックステープは外せない。チャンス・ザ・ラッパーの弟とも友だちだとか。(DOWNLOAD/LISTEN


8
Gem Jones 
Admiral Frenchkiss
[Goaty Tapes]





ピクシーズは好きか? ヨ・ラ・テンゴを聴いて泣いたことはあるか? この歌声には抗えない。2014年のベスト・オブ・インディー・ロック。(BUY/LISTEN


7
Lotic 
Damsel In Distress
[Janus]




アルカの『&&&&&』に影響を受けたようなディストロイド・サウンドの多くはベルリンで生まれた。この音源のダウンロードを逃した人は、2014年の一部を確実に見落としている。詳しくはこちらで。(DOWNLOAD/LISTEN


6
thestand4rd
thestand4rd
[self-released]





2015年に確実に来る、ミネアポリスのヒップホップ・コレクティブ。ジェイムス・ブレイクとポスト・トラップの向こう側へ。詳しくはこちらで。(DOWNLOAD/LISTEN


5
18+ 
Trust
[Houndstooth]





ポップにしてヒップ。正確には2014年の作品ではない、「ベスト・オブ・ミックステープ」な内容だが、マスタリング・エンジニアを見ればどういう文脈で聴かれるべきなのか、分かる人には分かるでしょう。(BUY/LISTEN


4
OGRE YOU ASSHOLE
PAPERCRAFT
[P-VINE]




レーベルの担当者から見本の白盤を預かり、プレイヤーで再生した瞬間にへなへなと座り込んでしまった。こんな作品が出てしまっては、この国でロックと呼ばれている音楽の9割はもはや聴く必要がない。ロックが終わったあとのロック。それでも続いているロック。それはあまりにも・・・。詳しくはこちらで。(BUY/LISTEN


3
Arca 
Xen
[Mute]




レコードでよく聴いた。音の鳴りがとにかく素晴らしい。瞬く間にアルカ論壇のようなものが形成され、自称「インディー(?)」な人たちにやたらと空中でディスられた気がするけれども、相手をする時間すら惜しく。まあ、詳しくはこちらで。『エレ・キング』の最新号では、単独取材でインタビューしてます。(BUY/LISTEN


2
D/P/I 
MN.ROY
[Leaving]




実質的には同率一位、2014年の最高峰。「D/P/Iの音楽は仕上がったらすぐにリリースされるされるべきだと思う。プレスされるのを待つようなモノじゃないんだ」と、『エレ・キング』の最新号で自ら語っています。(BUY/LISTEN


1
ETHEREAL
Cactus Jack
[Awful]




総勢11人、アトランタでルーム・シェアをするヒップホップ・コレクティブから生まれた2014年のベスト。オンラインの地下室とも共振する、2015年に間違いなく爆発するアンダーグラウンド・ヒップホップの未来。詳しくはこちらで。(BUY/LISTEN
13 December

Discover>>>: Favorite 10 Songs of 2014

今年のお気に入りを10曲リストアップしてみました。メタ的な批評性はなくして、iTunesの再生回数を参考にしました。新鮮さ確保のため、アルバム部門である《Favorite 10 Albums of 2014》収録曲は外してあります。

10
Nmesh - “KΞΞP/////THIS/////”


良識あるリスナー諸氏よ、どうかこの曲は無視してくれ。これはあの蒸気への大いなる未練だ。



9
シャムキャッツ - “MODELS”



曲単位では一番聴いた国内ロック。マジック・バスを降りた、あいつやあの子のための・・・。



8
THE BL∆CK HE∆RTS CLUB - “Girl Tell Me Something”



2014年のデ・ラ・ソウル。



7
Tink - “Treat Me Like Somebody”



2010年代の暫定メロウ・クイーン。



6
KOHH - “貧乏なんて気にしない”



実家がずっと賃貸アパートだったブルースみたいなものは俺にもある。



5
BOK BOK featuring KELELA - “Melba's Call”



海外メディアはこの曲を忘れたのか?



4
Holly Herndon - “Home”



とにかくアルバムが待たれます。



3
Tobias Jesso Jr. - “True Love”



アルバムが春先に出るみたいですね。



2
Chance the Rapper & The Social Experiment - “Wonderful Everyday: Arthur”



ミクステ、一応あれで完成なのかな。



1
iLoveMakonnen feat. Pyramid Quince, Rich Po Slim & Archibald Slim - “Vodka On The Weekend”



年間ベスト・トラック総なめ状態のこの男はしかし、アトランタのアンダーグラウンドでこそ輝いていた。

18 November

THE 10 ESSENTIAL R&B MIXTAPES OF THE DECADE SO FAR (2010-2013)

 先日公開した2010年代ミックステープの総まとめ、ラップ編である「THE 10 ESSENTIAL RAP MIXTAPES OF THE DECADE SO FAR (2010-2013)」に引き続き、R&B編である「THE 10 ESSENTIAL R&B MIXTAPES OF THE DECADE SO FAR (2010-2013)」を公開します。デートに使うもよし、2010年代のR&Bのムードをサッと把握するもよし、ワインでも煽りながら優雅に楽しんでください。(ラップ編と同様、アーティスト名の読みはbmr等の先例に拠ります。)


●Frank Ocean - 'Nostalgia, Ultra.' (2011.2.16)

フランク・オーシャン。1987年生まれ、カリフォルニア州ロングビーチのシンガー。ヒップホップ・コレクティブ<Odd Future>の一員。本作は、『Pitchfork』の「The 100 Best Albums of the Decade So Far (2010-2014)」において54位に選出されている。また、『FACT』の「The 100 Best Albums of the Decade So Far (2010-2014)」においても22位に選出されている。セクシュアリティのことなど含めて、次作に関する『ele-king』のレビューが参考になる。


●The Weeknd - 'House of Balloons' (2011.3.21)
 

ザ・ウィーケンド。1990年生まれ、カナダ出身のシンガー。いわゆる「インディーR&B」の草分け的な一枚。もっとも、この時から歌唱自体は既にメインストリーム級である。本作は、『Pitchfork』の「The 100 Best Albums of the Decade So Far (2010-2014)」において67位に選出されている。また、『FACT』の「The 100 Best Albums of the Decade So Far (2010-2014)」においても11位に選出されている。「その後」については、『サイン・マガジン』でのクロス・レビューが参考になる。


●Miguel - 'Art Dealer Chic Vol.2' (2012.2.27)

Twitter / Wikipedia / Wikipedia(mixtpe) / Pitchfork(review) / bmr 



ミゲル。1985年生まれ、カリフォルニア州ロサンゼルスのシンガー。今や超売れっ子。本作は三部作の同時リリースで、'Vol.1'と'Vol.3'も2010年代のR&Bを聴くなら外せない。


●Tink - 'Winter's Diary' (2012.3.14)
 



ティンク。推定1995年生まれのシンガー。Timbaland、Future Brown、How To Dress Wellらがラブコールを送る逸材。このブログでも最新のミックステープを取り上げている。


●Jeremih - 'Late Nights with Jeremih' (2012.8.7)

ジェレマイ。1987年生まれ、イリノイ州シカゴのシンガー。ミクステ・レベルでの活動は2014年がピーク。いろいろ取り上げたいが間に合わない。本作は、『FACT』の「The 100 Best Albums of the Decade So Far (2010-2014)」において33位に選出されている。個人的にはずっと「ジェレミー」と(心の中で)呼んでいた。


●Tinashe - 'REVERIE' (2012.9.4)

ティナーシェ。1993年生まれ、カリフォルニア州ロサンゼルスのシンガー。インディーR&Bではなく、正統派R&Bにおける大本命。モデル/ダンサー/女優業を同時にこなす超美形。オフィシャル・サイトから過去作が買えたり落とせたりします。今年、待望のアルバム・デビューを果たした。


●SZA - 'See.SZA.Run' (2012.10.29)
 
SoundCloud / Wikipedia / Wikipedia(mixtpe) / Pitchfork(SZA)



シザー。1990年生まれ、ニュージャージー州エセックスのシンガー。ブログ『キープ・クール・フール』で知ったので、これとかこの記事をご参照あれ。


●Cassie - 'Velvet Night' (2012.12.11)
 
Twitter / Wikipedia / Pitchfork(Cassie) / bmr


キャシー。1986年生まれのシンガー。ティナーシェと同じく、モデル/ダンサー/女優業を同時にこなすマルチ・タレント。歌手としても2006年にデビュー済みだが、その後は「50曲以上がレコーディング済み」との情報が流れるのみでアルバムはリリースされず、結局は三部作のミックステープとして2012年に放出された(現在は要パスワード化)。2013年には『RockaByeBaby』をリリースしている。


●Kelela - 'Cut 4 Me' (2013.10.1)
 

ケレーラ。1983年生まれ、<Fade to Mind>所属のシンガー。本作は、『FACT』の「The 100 Best Albums of the Decade So Far (2010-2014)」において66位に選出されている。web『ele-king』にインタビューレビューが掲載されている。個人的には「ケレラ」と読み、レビュー等で表記してきた。2014年ではこれこれがマスト!


●18+ / MIXTAP3 (2013.10.26)
 



リンク貼ったりするの力尽きました。インディーR&B最後の性感帯、エイティーン・プラスの『トラスト』がリリースされています。ライナーノーツ書いてるのでよろしくお願いします!
        
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